上山崎雅泰、堅島敢太郎
子どものゲーム時間の目安などを示した香川県の条例について、高松市出身の大学生(19)と母親が「ゲームをする自由を侵害し、憲法に違反する」と訴え、県に計160万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、高松地裁であった。天野智子裁判長は、条例は原告らに具体的な権利の制約を課すものではなく、憲法に違反しないと判断し、原告側の請求を棄却した。
問題とされたのは、2020年4月に施行された県ネット・ゲーム依存症対策条例。ゲームなどをしすぎると学力や体力の低下を招くとして、18歳未満の子どもの1日のゲーム時間を「平日60分、休日90分」を目安にするよう保護者に努力義務を課した。
判決はまず、ネットやゲームをしすぎると社会生活に問題や支障を引き起こす可能性が相当数、指摘されており、複数の医療機関で対応を余儀なくされているとし「予防すべきだという社会的要請には一定の根拠がある」と認めた。
また、専門家らの意見を踏まえ、保護者に一定の目安を示し、子どもがゲーム依存状態に陥ることがないように配慮を求める条例を制定したことは「立法手段として相当でないとは言えない」と指摘した。
その上で、「ゲームやスマホを自由に利用できる権利やeスポーツを楽しむ幸福追求権などが侵害され、憲法13条に違反する」とした原告側の主張について検討。スマホを自由に利用することや、eスポーツを楽しむことなどは「現時点では、いわば趣味や嗜好(しこう)の問題にとどまるといわざるを得ず、人格的生存に不可欠な利益とまではいえない」などとして退けた。
県側の代理人弁護士は取材に「他県や他の地方自治体で同様のルールを定めても合憲、と判断された意義のある判決だ」と語った。浜田恵造知事は「県の主張が認められた。引き続き、条例の趣旨の理解促進に努め、対策に積極的に取り組んでいく」とのコメントを出した。
訴訟を巡っては、原告側が訴えを取り下げようとしたが、県側が同意せず、今年5月に結審していた。(上山崎雅泰、堅島敢太郎)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル